子育て移住先を選ぶとき、多くの人は子育て支援制度の手厚さに目を向けます。しかし、その街が今後も学校・病院・公共交通といった生活インフラを維持できるかどうかは、人口の増減トレンドに大きく左右されます。人口減少が急速に進む自治体では、数年〜十数年のうちに学校の統廃合や公共サービスの縮小が起こる可能性があります。
この記事では、2025年(令和7年)国勢調査の人口速報集計(2020年→2025年)に基づき、人口減少率が大きい市町村をランキングし、人口減少地域への移住を考えるうえで押さえておきたいメリットと注意点を、データと一般的な傾向の両面から解説します。増加側のデータは人口増加率ランキング 市町村TOP50で紹介しています。
1. 人口減少率とは?
人口減少率とは、一定期間における人口の減少を割合で示した指標です。ここでは国勢調査の2020年と2025年の人口を比較し、5年間の増減率(%)を算出しています。マイナスの値が大きいほど、人口が速いペースで減っていることを意味します。
人口増減率の読み方
人口を維持または増加。全国では少数派で、都市近郊のベッドタウンなどが該当します。
緩やかに減少。全国の多くの自治体がこのカテゴリに該当します。
減少が進む地域。高齢化率が高く、若年層の流出が続いていることが多いです。
減少率が特に大きい地域。過疎化が進む山間・沿岸部のほか、災害の影響を受けた地域が含まれます。
人口減少の要因には、自然減(死亡数が出生数を上回る)と社会減(転出者数が転入者数を上回る)の2つがあります。多くの地方では、若年層が進学・就職で都市部へ流出する社会減と、高齢化による自然減が同時に進んでおり、これが減少率を押し上げる主な背景となっています。
2. 全国の人口減少の現状
令和7年国勢調査の人口速報集計によると、データ対象となった自治体のうち、2020年から2025年にかけて人口が減少した自治体は1,659にのぼり、全体の約87%を占めています。人口が増加したのは250自治体にとどまり、日本の大多数の市町村がすでに人口減少局面に入っていることがわかります。
1,659
人口が減少した自治体数
約87%
減少自治体の割合
-6.0%
全自治体の平均増減率
平均増減率が-6.0%というマイナス幅は、人口減少が一部の地域だけの問題ではなく、全国的な構造課題であることを示しています。とりわけ人口規模の小さい町村では、わずかな転出でも減少率が大きく振れやすく、ランキング上位には人口1〜3万人規模の自治体が並ぶ傾向があります。
3. 人口減少率が大きい自治体ランキング ワースト50
人口1万人以上の自治体を人口減少率(2020年→2025年)が大きい順に並べたランキングです。あわせて、高齢者比率・財政力指数・空き家率といった、その街の状況を読み解く関連指標も掲載しています。
被災地域への配慮について
上位には令和6年能登半島地震の影響を受けた地域が含まれます。これらの地域の人口減少は災害による避難・転居の影響であり、街の魅力の問題ではありません。復興が進むにつれて状況は変化していく可能性があり、本ランキングは特定の地域を評価・比較するためのものではなく、あくまで全国の人口動態を客観的に把握するための資料としてご覧ください。
| 順位 | 自治体名 | 人口増減率(%) | 人口 | 高齢者比率 | 財政力指数 | 空き家率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 石川県 珠洲市 | -34.04 | 8,528 | 51.6% | 0.22 | 24.5% |
| 2 | 石川県 輪島市 | -26.56 | 18,072 | 46.0% | 0.23 | 29.2% |
| 3 | 石川県 能登町 | -18.87 | 12,727 | 50.4% | 0.20 | 26.2% |
| 4 | 高知県 室戸市 | -17.82 | 9,650 | 51.4% | 0.22 | 32.1% |
| 5 | 山梨県 身延町 | -16.34 | 8,921 | 47.5% | 0.27 | — |
| 6 | 高知県 土佐清水市 | -16.14 | 10,388 | 50.5% | 0.26 | 39.5% |
| 7 | 三重県 南伊勢町 | -16.10 | 9,220 | 53.4% | 0.21 | — |
| 8 | 北海道 芦別市 | -15.53 | 10,605 | 47.7% | 0.25 | 28.1% |
| 9 | 和歌山県 串本町 | -14.75 | 12,752 | 46.3% | 0.26 | 32.5% |
| 10 | 三重県 紀北町 | -14.63 | 12,468 | 45.8% | 0.28 | 26.3% |
| 11 | 石川県 志賀町 | -14.58 | 15,914 | 44.6% | 0.57 | 33.0% |
| 12 | 山形県 尾花沢市 | -14.53 | 12,796 | 41.6% | 0.29 | 12.9% |
| 13 | 秋田県 男鹿市 | -14.13 | 21,600 | 46.9% | 0.35 | 23.2% |
| 14 | 北海道 根室市 | -13.94 | 21,201 | 35.1% | 0.34 | 16.5% |
| 15 | 秋田県 三種町 | -13.86 | 13,140 | 45.5% | 0.25 | 21.3% |
| 16 | 埼玉県 小鹿野町 | -13.70 | 9,431 | 38.9% | 0.32 | — |
| 17 | 北海道 留萌市 | -13.69 | 17,360 | 36.9% | 0.32 | 19.3% |
| 18 | 三重県 鳥羽市 | -13.67 | 15,129 | 39.3% | 0.43 | 30.2% |
| 19 | 熊本県 山都町 | -13.57 | 11,670 | 50.1% | 0.22 | 19.7% |
| 20 | 富山県 朝日町 | -13.47 | 9,588 | 44.6% | 0.36 | — |
| 21 | 北海道 美唄市 | -13.45 | 17,668 | 42.3% | 0.27 | 21.4% |
| 22 | 山口県 美祢市 | -13.34 | 20,145 | 42.6% | 0.38 | 24.2% |
| 23 | 岩手県 岩手町 | -13.21 | 10,662 | 39.9% | 0.33 | — |
| 24 | 和歌山県 有田市 | -13.20 | 23,034 | 34.9% | 0.52 | 20.8% |
| 25 | 鹿児島県 さつま町 | -13.16 | 17,580 | 41.7% | 0.36 | 29.0% |
| 26 | 山口県 周防大島町 | -13.14 | 12,854 | 54.5% | 0.17 | 36.0% |
| 27 | 愛知県 南知多町 | -13.03 | 14,452 | 38.8% | 0.50 | 22.7% |
| 28 | 三重県 尾鷲市 | -13.03 | 14,134 | 43.8% | 0.35 | 35.1% |
| 29 | 愛媛県 愛南町 | -13.01 | 17,050 | 45.6% | 0.22 | 24.6% |
| 30 | 大分県 竹田市 | -12.96 | 17,696 | 48.2% | 0.25 | 30.4% |
| 31 | 徳島県 三好市 | -12.95 | 20,549 | 46.0% | 0.22 | 37.6% |
| 32 | 茨城県 大子町 | -12.90 | 13,706 | 46.2% | 0.32 | 19.2% |
| 33 | 岩手県 一戸町 | -12.87 | 10,015 | 42.5% | 0.34 | — |
| 34 | 熊本県 上天草市 | -12.86 | 21,404 | 42.0% | 0.25 | 26.4% |
| 35 | 高知県 黒潮町 | -12.83 | 8,945 | 45.0% | 0.19 | — |
| 36 | 福島県 南会津町 | -12.79 | 12,603 | 41.9% | 0.23 | 17.4% |
| 37 | 大分県 津久見市 | -12.69 | 14,057 | 45.0% | 0.41 | 26.3% |
| 38 | 岩手県 釜石市 | -12.68 | 28,012 | 39.8% | 0.51 | 24.1% |
| 39 | 兵庫県 香美町 | -12.66 | 14,031 | 40.6% | 0.23 | 21.6% |
| 40 | 島根県 奥出雲町 | -12.64 | 10,351 | 43.3% | 0.17 | — |
| 41 | 鹿児島県 伊佐市 | -12.50 | 21,397 | 41.6% | 0.37 | 32.0% |
| 42 | 青森県 つがる市 | -12.49 | 27,069 | 38.8% | 0.24 | 17.4% |
| 43 | 秋田県 北秋田市 | -12.38 | 26,459 | 44.5% | 0.26 | 17.4% |
| 44 | 三重県 熊野市 | -12.38 | 13,988 | 44.6% | 0.25 | 32.4% |
| 45 | 宮城県 蔵王町 | -12.33 | 10,010 | 38.2% | 0.46 | — |
| 46 | 栃木県 那珂川町 | -12.13 | 13,370 | 39.6% | 0.40 | 19.0% |
| 47 | 宮崎県 串間市 | -12.13 | 14,781 | 42.8% | 0.30 | 28.7% |
| 48 | 岩手県 宮古市 | -12.09 | 44,277 | 37.8% | 0.38 | 22.2% |
| 49 | 京都府 京丹波町 | -12.06 | 11,350 | 44.2% | 0.28 | 16.5% |
| 50 | 石川県 七尾市 | -12.03 | 44,249 | 38.5% | 0.43 | 22.1% |
※ 人口1万人以上の自治体が対象。人口増減率・人口は令和7年国勢調査 人口速報集計(2020年→2025年、2026年5月29日公表)に基づく。高齢者比率・財政力指数・空き家率は各種政府統計より。
4. ランキングの傾向分析
過疎化が進む山間・沿岸部が中心
減少率が大きい自治体の多くは、山間部や半島・沿岸部に位置する小規模な町村です。主要都市へのアクセスが限られ、若年層が進学や就職を機に都市部へ流出する構造が長年続いてきました。ランキング上位の自治体は高齢者比率が高い傾向にあり、出生数の減少と相まって、人口減少が加速しやすい状況にあります。
高齢化と人口減少の連動
高齢者比率が高い地域では、自然減(死亡数が出生数を上回る)が構造的に大きくなります。加えて、若い世代が少ないため出生数も伸びにくく、人口減少に歯止めがかかりにくくなります。ランキングに並ぶ自治体の関連指標を見ると、高齢者比率の高さと減少率の大きさが連動している様子が読み取れます。高齢化の全国比較は高齢者比率ランキングもあわせてご覧ください。
災害が短期的な急減を招くケース
過疎化のような長期的・構造的な要因とは別に、大規模災害が短期間の急激な人口減少を引き起こすことがあります。今回のランキング上位には、令和6年能登半島地震で被災した地域が含まれています。これらは避難や転居による一時的な減少であり、地域の魅力そのものとは切り離して捉える必要があります。復興の進捗によって、今後の人口動態は変化していく可能性があります。
5. 人口減少地域への移住を考える視点
人口が減少している地域は、移住先として一律に避けるべき場所ではありません。むしろ、都市部にはないメリットが得られる場合もあります。一方で、生活インフラの持続性という観点からは注意すべき点もあります。メリットと注意点の両面を理解したうえで判断することが大切です。
考えられるメリット
- ・住宅費が安い:地価や家賃が都市部より低く、広い住まいを手頃な価格で確保しやすい傾向があります。空き家率の高い地域では選択肢も豊富です。
- ・空き家バンクの活用:多くの自治体が空き家バンクを整備しており、改修補助とセットで移住者を受け入れているケースがあります。
- ・移住支援が手厚い場合がある:人口維持のため、移住支援金や子育て世帯向けの独自制度を設けている自治体があります。自然環境の豊かさも魅力です。
注意しておきたい点
- ・医療機関の縮小リスク:人口減少に伴い、地域の病院・診療所や小児科・産科が縮小・撤退する可能性があります。
- ・公共交通の維持:バス路線の減便・廃止が進む地域もあり、車がないと生活が難しくなる場合があります。
- ・学校の統廃合:児童・生徒数の減少で小中学校が統廃合され、通学距離が延びることがあります。
確認しておきたいポイント
移住を検討する際は、減少率の数字だけでなく「今の生活に必要なサービスが維持されているか」を個別に確かめることが重要です。空き家の状況は空き家率ランキング、自治体の財政体力は財政力指数ランキングが参考になります。財政力指数が高い自治体は、人口が減少していても行政サービスを維持しやすい傾向があります。実際に足を運び、移住相談窓口で医療・交通・教育の現状を確認することをおすすめします。
6. 子育て世帯への影響
人口減少は、子育て世帯の生活に特に大きく関わります。子どもが成長する10年〜20年という長い期間を見据えると、以下のような影響を念頭に置いておく必要があります。
学校の統廃合:児童・生徒数の減少により、小中学校が統廃合されるケースがあります。通学距離が延びたり、スクールバスでの通学が必要になったりすることがあります。一方で、少人数教育ならではのきめ細かな指導が受けられるという側面もあります。
小児医療の縮小リスク:人口が減ると、小児科や産科の維持が難しくなる地域があります。夜間・休日の急な受診に備え、通える範囲に対応可能な医療機関があるかを事前に確認しておくと安心です。医療アクセスランキングも参考にしてください。
同世代コミュニティの規模:子どもの数が少ない地域では、同世代の友人や習い事の選択肢が限られることがあります。地域の子育てサークルや行事の活発さを、移住前に確認しておくとよいでしょう。
支援制度の持続性:手厚い子育て支援を打ち出している自治体でも、財政状況によっては将来的に制度が見直される可能性があります。単年度の支援額だけでなく、自治体の財政基盤の安定性もあわせて見ておくことが大切です。
マチスコアでは人口動態だけでなく、子育て・医療・教育・財政・住環境・将来性の6軸総合評価で自治体を比較できます。人口が増えている街も含めて検討したい方は人口増加率ランキング 市町村TOP50を、条件に合う街を探したい方は診断ツールもぜひご活用ください。
よくある質問
Q. 人口減少率とは何ですか?
A. 一定期間における人口の減少を割合で示した指標です。本ランキングでは国勢調査の2020年と2025年の人口を比較し、5年間の増減率(%)を算出しています。マイナスの値が大きいほど人口の減少ペースが速いことを意味します。
Q. 人口が減っている街には住まないほうがよいのですか?
A. 一概にそうとは言えません。人口減少地域は住宅費が安く、空き家バンクや移住支援制度が手厚い場合があります。一方で医療機関や公共交通、学校の統廃合といった生活インフラの縮小リスクもあります。減少率だけでなく、実際の生活に必要なサービスが維持されているかを個別に確認することが大切です。
Q. ランキング上位に災害の被災地域が含まれているのはなぜですか?
A. 2024年(令和6年)1月の能登半島地震で被災した地域は、避難や転居により一時的に人口が大きく減少しています。これは災害による影響であり、街そのものの魅力や住みやすさの問題ではありません。復興の進展に伴い、状況は今後変化していく可能性があります。
Q. ランキングはいつの国勢調査データですか?
A. 2025年(令和7年)国勢調査の人口速報集計(2026年5月29日公表、総務省統計局)に基づき、2020年と2025年の人口を比較した5年間の増減率(%)を用いています。市区町村別人口の最新の公式統計です。年齢別人口などを含む人口等基本集計(確定値)の公表後に、さらに更新します。